厚生労働省が2012年度から3年間の介護保険の介護報酬を決めた。入所施設のサービスを引き下げる一方、在宅サービスを手厚くしたのが特徴だ。「施設から在宅へ」の方針を明確にしたといえる。
今回の改定では、介護職員の処遇改善を目的とした交付金制度が3月末で廃止されることを受け、報酬全体では前回より1・2%増とした。急速な高齢化で給付費が膨らむ中、給付の効率化と重点化を一層進め、増加分の多くも在宅サービスへと振り分けられた。
在宅誘導への目玉として新設されたのが「24時間地域巡回型サービス」である。日中、夜間を問わず利用者の求めに応じてホームヘルパーなどが自宅を訪問する。料金を定額制にして利用しやすくもした。
一人暮らしの高齢者や重度の要介護者にとっては安心感につながるサービスだ。事業者には夜間に勤務するヘルパーの確保などで課題も多いが、積極的な参入を期待したい。
施設サービスも在宅への傾斜が鮮明となった。報酬が全般的に下げられる中で、老人保健施設ではリハビリを積極的に行ったり、在宅復帰を進めた場合に加算する制度が設けられた。
厚労省は今後、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように「地域包括ケア」を推進するとしている。しかし、実際には財源不足から給付を抑制する狙いが目立ち、利用者が望む在宅介護となるかどうかは不透明といわざるを得ない。
例えば、調理や洗濯など家事全般を手助けする「生活援助」は時間区分が見直され、サービスの時間が短くなる可能性がある。一人暮らしの高齢者らには影響が大きいだろう。
施設についても入所者が重度化している上に家族の介護力が落ちており、在宅復帰を進めるのは簡単ではない。受け皿不足のまま退所を迫られる人が出てくる可能性も否定できまい。
在宅サービスを増やすには人手不足の対策も必要だ。今回の改定では、職員への給与上乗せのため従前の交付金と同水準を維持できるよう加算措置を設けたが、まだ不十分だろう。
特別養護老人ホームへの入所待機者の多さが物語るように、家族も本人も在宅での介護には負担感や不安が大きい。地域できめ細かくケアできるよう、在宅サービスの底上げと関係機関の連携強化がこれまで以上に重要だ。財源を含め制度の抜本的な見直しに向けた議論を進めていく必要がある。