約800年前に発見されたと伝わる府中市の名湯・矢野温泉の中核施設「あやめ荘」を継承した「矢野温泉あやめ」(同市上下町矢野)が8月1日で開業1周年を迎える。入館者数は延べ6万人を超え、初年度の目標に掲げた5万人を上回り、商店街をはじめ地元も歓迎している。一方で収支は赤字が続いており、一層の集客が課題となっている。
あやめは、JA共済連が経営難で閉館したあやめ荘を、呉市で魚の養殖などを手掛けていた「こま」(北吉孝一郎会長)が購入して再生。大浴場や露天風呂、23の宿泊部屋(96人分)を備え、平日は主に近隣、週末は岡山や四国などからも行楽客が訪れ、入浴や大衆演劇を見ながらの食事を楽しんでいる。
サービスのほとんどはあやめ荘当時と変わらないが、評判なのが新鮮な魚介類中心の料理。魚の養殖などの経験が生きている。また20人以上の団体客は片道2時間以内であればバスで無料送迎するサービスを新たに取り入れ、好評だ。
あやめの集客は上下町商店街など一帯のにぎわいにもつながっている。手芸品店を営む前原聖子さん(69)は「あやめのお客さんが商店街に来たり、こちらからも行楽客に宿泊先などを案内できて便利」と話す。
もっとも、知名度不足もあり、集客はあやめ荘閉館前の8〜10万人に届いていない。光熱費など施設維持費に加え、無料送迎の経費も膨らむ。北吉会長は「当面の赤字は覚悟の上。上下のほか、世羅町の観光農園とも連携し集客につなげたい」と意欲を燃やす。
市観光協会の伊藤敏雄上下支部長は「あやめと商店街がタッグを組んだ割引サービスなど、観光客が上下に長時間滞在する仕組みができれば」と話す。
あやめの入浴料金は時間帯によって中学生以上500〜700円など。8月1日は午前10時半からマグロの解体ショーがある。問い合わせはあやめ(0847(62)8060)。