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| 瓦屋根の町並みを写す藤原さん=倉敷市下津井田之浦 |
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両脇に軒を連ねる木造の民家が、細い路地に落ちようとする日差しをさえぎる。路地の真上に開けた空には、まるで浮かんでいるように見える巨大な瀬戸大橋の橋げた。新旧の建築物が独特のコントラストを織りなす。
県を代表する漁業のまち・下津井。小型漁港がひしめく港の背には、鷲羽山連峰が迫り、平地と山肌に人々が集まり暮らしてきた。「海の近くで育ったのもあり、カメラを始めた学生時代から港町の情緒に引きつけられ、撮影に来ていた」。児島下の町で生まれ育った藤原増幸さんが話す。本名は立士(りゅうじ)だが、児島ではカメラマンとしてのペンネームの方が通りがいい。
江戸時代の北前船寄港地として、金毘羅(こんぴら)参りの四国への玄関口としてにぎわった旧下津井街道(金毘羅往来)は、その役割を他の幹線道に譲り、今は街中の細い小道として名残を残す。
港に出ると道ばたや漁船には冬の風物詩・干(ひ)だこがぶらさげられ、小高い場所に上ると瓦屋根の町並みが広がり、撮影場所には事欠かない。
中でも藤原さんが気に入っているポイントは、細く入り組んだ路地だ。
「路地に漂う生活感が好き」。家族が取ってきた魚を並べて売ったり、七輪で焼く女性たち。走り回って遊ぶ子どもや、祭りの日にだんじりを飾り付ける若者。昨年発行した写真集には、下津井の写真を何枚も収めたが、多くは路地を舞台に暮らす人たちにレンズを向けている。
半世紀にわたって下津井のまちや人を写し続けてきた中、最近は路地を歩いていて寂しさを感じることが多くなったという。「瀬戸大橋や海岸沿いの道ができて交通の便が良くなり、かえって若者たちが外に出ていったのかな。子どもを見掛けなくなった」。藤原さんは瀬戸大橋を見上げながらつぶやく。
来年、架橋二十周を迎える瀬戸大橋。岡山、香川県では数々の記念行事が計画されているが、藤原さんは、架橋が地元の人にもたらした複雑な思いも知っている。開通直後からの列車騒音。橋のすぐ下で暮らす女性に出会った際には「最近でもうるさいかな」と心配そうに尋ねた。女性が「慣れたのかな。夜も気にせず寝られるよ」と答えると、藤原さんの表情が少しだけ和らいだ。
地域発展と環境とのせめぎ合いの中、昔ほどの活気や生活感は消えつつある下津井の路地。それでも藤原さんは「歩けば出会いや思わぬ発見がある」と言う。一見、変わらない日常の中で、少しずつ変化を見せる風景。うつろう時代の一点一点を今後もフィルムに収めていくつもりだ。 |