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| 患者役の女性(左)と「医療面接」をするオシアの学生たち。生活状況も含めて患者が抱える問題を深く探る |
第4部 安心のありか (10) 医学生たち
生活まで診る視点養う
「こんな人たちもいたんだー」
岡山大医学部三年の光田栄子さん(33)。入学間もなく「OCSIA(オシア)」という医学生らのサークルと出合い、同志を得たような感覚を味わった。
オシアの活動の軸は、患者役の市民と学生が診察場面を設定して行う「医療面接」。診断に必要な情報をいかに効率よく聞き出し、患者の不安を取り除くか。医師としてのコミュニケーション能力を徹底的に磨く。
月一回の定例会が終わるのはいつも午後十一時過ぎ。参加学生は会社員経験があったり、他学部から入り直したりと経歴もユニーク。「患者本位の良い医師になりたい」が共通の願いだ。
安田英己(ひでき)さん(59)ら「清輝橋グループ」の医師三人とも、ここで出会った。
「人の一生に最後までかかわりたかった」と光田さん。特別養護老人ホームなどで介護職を五年務めた経験が医師を目指す動機となった。
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「家庭医」「プライマリーケア医」…。患者を病院から在宅へと誘導する国の医療改革の流れが強まる中、幅広い初期診療ができ、介護との連携を重視する医師の養成は急務だ。
しかし医学部教育は専門ごとに細分化され、学生がそうした医療に接する機会は少ない。清輝橋グループは二〇〇一年から岡山大医学部衛生学教室などに実習の場を提供。往診や介護サービス担当者会議など、在宅患者を支える「生の現場」を見せてきた。
関心を寄せる学生が五年前に設立したのがオシア。看護を学ぶ医学部保健学科や薬、歯学部生も加わり、多職種連携で患者の生活まで診る視点を養う。
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光田さんの“転身”には訳がある。介護の仕事はやりがいがあった。個々のお年寄りに応じたコミュニケーションによって心が通じ合う喜び。入浴を拒んでいた認知症の女性は、声かけを工夫すると素直にお風呂に入ってくれた。
「一生続けてもいい」。そう思う半面、常に感じていたのが「医療」の壁だ。
施設入所者が肺炎を起こすと病院へ運ばれ、そのまま戻ってこない。昼間は往診に来る医師も、夜間の急診だと難しい。医師の判断や病院の都合が、患者の生活を左右しているように思えた。
体調を崩して入院した認知症男性を一週間後に訪ねたことがある。ベッドに手足を固定されていた。光田さんの問い掛けに「ほーか」と答えた時、同室の患者の家族は「この人しゃべれるの?」と驚いた。
「何日も話す機会がなかったんです。ショックでした」。男性は病院で亡くなった。
幸せな最期を迎えてもらうため、自分に何ができるか―。悩んだ末の答えが「医師になる」ことだった。
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光田さんはがん患者宅を安田さんと往診し、多職種連携の勉強会にも参加。そこで共感したのが「医療も介護もその人を支えるパーツの一つ」という清輝橋グループの考えだった。患者の生活を第一に考え、介護職などとのネットワークを広げられる医師を目指す。
活動を見守る安田さんはこう考える。
「在宅医療を根付かせるには若い芽を伸ばす学生教育が何よりも重要だ」
(2009年5月11日朝刊掲載)
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