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| 津下さん宅でサービス担当者会議を開く内藤さん(中央)。泰啓さんの思いを伝えられるよう隣に座る |
第1部 支えの場で (8) 専門職
最後まで「思い」に沿う
食事、水分摂取量ともホームヘルパーの報告では目標を下回っている。便が硬く、排せつを苦しがっている様子も訪問看護師から伝えられた。
「お通じをどうするかですねえ」
一月半ば、岡山市沼の津下八重子さん(96)宅。車座の“会議”で、ケアマネジャーの内藤さやかさん(38)が投げかけた。
八重子さんは、ほぼ寝たきりで要介護5。認知症もある。長く自宅療養を続けてきたが、年明け後に体調を崩し、デイサービス通いを休んでいる。
同居する長男泰啓(やすひろ)さん(60)は脳性まひで車いす生活。不安を募らせる泰啓さんのため、内藤さんがヘルパー、訪問看護、デイサービスの各事業者に声をかけ集まってもらった。
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「サービス担当者会議」は、介護保険利用者へのサービス内容変更や、利用者の状態が変化した時に開くことが義務づけられている。本人、家族の意向を聞き、各事業者が役割分担する。
内藤さんは席上、デイサービスでボール投げを楽しむ八重子さんの写真を紹介し、「元気になれば二週間に一回でも行かせたい」と話した。
好物のお汁粉に誤嚥(ごえん)を防ぐためのとろみ剤を入れるなど、こまめに食事と水分摂取を勧めることを確認。それでも一定量以下の日が二日続けば内藤さんに連絡し、主治医に相談することを決めた。
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内藤さんは二〇〇〇年十二月に居宅介護支援事業所を立ち上げた。ケアマネは七人。他の介護保険サービス事業所を併設しない「独立型」の運営だ。
主な収入がケアプラン作成料しかない中で経営は厳しいが、「利用者に適したサービスを自由に選びたい」というこだわりがある。
原点は介護保険前、八年間勤めた老人保健施設での体験にある。当時、入所者百人に対し生活相談員は一人。本人の希望や思いをきちんとくみ取る仕組みがなかった。
鮮明な記憶がある。ある年の元旦。手を引き食堂に案内していた九十四歳の女性が「正月なのにすまないね」と言った。入所者の半数以上が一時帰宅し閑散としたフロア。残されたつらさが触れた手から伝わり、「気を使わせてごめんね」と心の中で謝った。
「彼女には子どもが五人いた。『まさか帰れない』とは思わなかったでしょう」
どうにもできないもどかしさを抱えていた時、ケアマネという新たな専門職に出合った。
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津下さん宅での会議の最後、内藤さんは八重子さんの体調が今以上悪化した場合、病院で延命治療するか、家でみとるかという選択に少し触れた。
「病院に行くかなあ…」。在宅でのみとりを希望していた泰啓さんが迷いを口にした。
入院すれば、家に戻れなくなる可能性が高い。
一人息子の泰啓さんを大切に育てた八重子さん。学校への障害児受け入れが難しかった時代、小中学校にずっと付き添った。認知症が進む前、「やっちゃんが心配」というのが口ぐせだった。
「やっちゃんと一緒にいることが今のお母さんを支えているんじゃないかな」
揺らぐ泰啓さんに内藤さんはそう伝えた。
(2009年2月19日朝刊掲載)
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