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| デイサービス利用者と話す青木さん。小さな村だからこそ一人一人の顔が見えるケアができると思う |
第1部 支えの場で (6) 最後の砦
特養入所「助けられた」
雪をかぶった駒の尾山(一、二八一メートル)が車窓から見える。岡山県北東端の村、西粟倉村。村で一人の居宅介護支援事業所ケアマネジャー、青木あや子さん(60)はいつも軽乗用車のハンドルを握り、山道を縫って利用者宅を訪ねる。
村民(約千六百人)の三分の一が六十五歳以上の高齢者。うち在宅で介護保険サービスを受けるのは三十人余り。青木さんはそのケアプラン作成を一手に担う。面接による体調の把握も欠かせない。
この仕事に就いて六年余。「住み慣れた家で最期を迎えてもらえたら」と願うが、村に在宅サービスは少ない。自宅介護が難しくなり、施設入所を選ぶ人も数多く見てきた。
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西粟倉村の南隣。美作市中町の特別養護老人ホーム「やすらぎ荘」は両市村による一部事務組合が運営する。特養を持たない村の「最後の砦(とりで)」だ。
「おばぁも家族も助けられた」。昨年の大みそか。西粟倉村坂根の建築業田中貞己さん(57)が、認知症の母親ぬい子さん(88)を施設に訪ねた。村内からの入所者は約十人。計五十人が暮らす。
在宅介護をほぼ十年続けた。五年目を過ぎたころ、紙おむつの便を手で触れたり、花瓶の花を口にする「異食」行動が表れた。深夜の徘徊(はいかい)。自宅近くの溝で水に漬かったことも。片時も目が離せなくなった。
田中さんは日中の大半、家を空ける。共働きの妻の帰宅は夕方。娘夫婦の協力やデイサービス、ホームヘルパーと利用できる介護支援をすべて使った。
昨年初め、同荘から「空きが出た」と連絡があった時、田中さんは入所を迷わなかった。サポートしてきた青木さんの目にも「もう限界」と映っていた。
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二十四時間の生活介助や機能訓練を行う特養。手厚い施設介護は在宅のおよそ二・五倍給付がかさむ。保険財政を圧迫するため、どの市町村も「入所者数をできるだけ抑えたい」のが本音だ。
年間の給付総額が約一億五千万円と、一般会計(約十五億円)の一割に当たる同村で、施設サービスが占める割合は全給付の約四割に上る。入所者が一人増えてもその影響は大きい。
「一人一人が望む環境で過ごしてもらいたい」という青木さんは一方で、村嘱託職員として小さな自治体のジレンマにも直面する。「サービスを充実させれば介護保険料にはね返る。その理解が得られるのかどうか」
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くすんだ外壁が古びた印象のやすらぎ荘。築三十四年を経て、建て替えが検討されている。
計画では、プライバシー尊重などを目的に国が推進する「個室・ユニット」方式を導入する。改築後は職員数が現在(十七人)の一・五倍になり、試算では利用者一人当たりの毎月の負担額は五万―二万円も増える。「環境は快適になっても、入所を妨げることになっては元も子もない」。青木さんの心境は複雑だ。
毎月、本人がもらう年金に、その三倍ほどを家計から足して母を支える田中さんも心配でならない。
「また、『在宅』で頑張らんといけんかもしれん。やっていけるだろうか…」
(2009年2月15日朝刊掲載)
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