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| 折田薫三氏 |
緊急寄稿 病気腎をめぐって 4 岡山大名誉教授 折田薫三 自ら「第三の道」断つ
現行の病気腎移植は倫理的にはもちろん、医学的にも妥当性がないと総括された移植関係学会の声明は、報じられてきた実情をみる限り、当然であると言わざるをえない。
瀬戸内で病気腎移植が長年、恒常的に行われているとの第一報から日が浅い昨年十一月二十六日の本紙に“密室医療 原則踏み外す”と題して寄稿した。和田移植から約四十年たった今、社会的医療不信を払しょくすべく確立された「オープン・フェア・ベスト」という移植医療の原則を、誰もが順守する責務のあることを述べ、次の二つを問題提起した。
一つは、手術医が一般外来の患者から、ドナー(臓器提供者)となるよう同意を直接取りつけ、独断で腎臓を摘出したため、腎摘がその患者にとってベストな治療であったのかの疑念が生じたこと。生体移植ではドナーの心身の負担を最小限にするのが最優先だ。もう一つは、すべてが公になれば、将来の定着に先立つ臨床試験の対象になる病気腎が特定されるのでは、ということだった。
声明やこれまでの調査で明らかになった、これらへの解答から、今回の病気腎移植の一断面が見えるはずである。
不適切な腎摘への危惧(きぐ)は、ほとんどの患者でそうだったと報告され、残念ながら現実となった。内科的疾患であるネフローゼ患者から腎臓内科専門医に相談もなく両腎を摘除したこと、移植を目的とした腎摘出術の選択により患者のリスクを大きくしたことなど、声明に接したドナー患者の心情は察して余りある。
適正な病気腎の特定では、病気腎やドナーの詳細な医学データを収めたカルテと、移植患者の長年の詳細な術後経過を記したカルテの二つが移植の一例目から整然とそろい、学術の場ですべて公にされれば、適正に摘出された移植可能な病気腎の特定を含めた学術的新知見が掘り起こされるのでは―と期待していた。
ところが、移植数の最も多い関係病院では病気の腎臓摘出二十例、移植二十五例のカルテのうち、保存されているのは、それぞれわずか六例だったという。これでは、適正な病気腎の特定はおろか病気腎移植の一切が闇に消えたも同然である。
カルテの保存期間を勘違いし、早く破棄した病院側の責任は重大であるとされている。医師たる者、自分の一生をかけた疾患のカルテやそのコピー、病理標本などすべての資料を手元にして離さないのが常である。集積したカルテを分析し、治療法の改善につなげるのが務めである。カルテなしに、担当医からいかように説明されても、ただ空虚な話にすぎない。
瀬戸内グループのある者は、原則を踏み外した移植医療を行い、さらに医師の義務ともいうべきカルテの保存を怠り、自分自身の手で第三の病気腎移植定着への道を断ったのである。私は、せめて瀬戸内で生じた不条理な出来事が、転じて移植医療の普及・啓発の一助となるよう祈るばかりである。
(緊急寄稿 おわり)
おりた・くんぞう 岡山大医学部卒。1978年、同学部第一外科教授。日本移植学会会長、日本臓器移植ネットワーク中国・四国ブロックセンター長などを歴任。日本移植学会、日本外科学会、日本癌治療学会の各名誉会員。岡山県臓器バンク理事長。76歳。
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