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揺れる移植医療
第4部 生体の光と影 7 ケアの要 患者、ドナーに安心を
リハビリ中の移植患者を訪ねる岡崎さん。患者やドナーの悩みに耳を傾けるコーディネーターの存在がケアの質を高める=岡山大病院
リハビリ中の移植患者を訪ねる岡崎さん。患者やドナーの悩みに耳を傾けるコーディネーターの存在がケアの質を高める=岡山大病院

 「レシピエント移植コーディネーター」と呼ばれる職種がある。

 移植施設に所属するが、病棟や外来など病院内の部署を超え、手術前から術後までレシピエント(移植患者)をトータルにみるケアの要だ。

 岡山大病院(岡山市)で肺移植を担当する元看護師の岡崎恵さん(31)もその一人。移植患者は、拒絶反応や感染症の恐れが生涯続くため、退院後も食事や服薬など健康管理面をサポートする。身近な相談窓口にもなる。

 「顔を見ると安心。娘より頼りになるかも」。生体肺移植を受けた岡山県内のある女性は話す。

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 生体ドナー(臓器提供者)とのかかわりも重要な役目だ。同大病院での肺移植は、生体が八割を占める。心身のリスクを伴うだけに、ドナー本人の自由な意思決定をどう支援していくか。細心の注意を払う。

 移植患者を交えた計三回のインフォームドコンセント(十分な説明と同意)。さらに、ドナーには個別面接も行う。医師とともに岡崎さんも同席するこの場で、ドナーの本音が漏れることも少なくない。

 「家族や肉親を助けたい気持ちが強い一方、手術への恐怖やプレッシャーがある。その間で、心は揺れている」

 迷っているドナーには「やめることもできる」と助言する。ドナー体験者を紹介することもある。「家族の問題を整理し、意思を固めるお手伝いです」。結果として、生体移植を見送ったとしても、その選択を尊重する。

 検査の手配、複数の医師が集まるインフォームドコンセントの時間調整などの仕事もこなす。文字通り、院内外を結ぶコーディネート役だ。

 同大の肺移植チームを率いる伊達洋至教授は「彼女がいなければとても移植が回らない。存在は大きい」と信頼を寄せる。

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 レシピエント移植コーディネーターは米国で生まれ、日本では一九九〇年代から国立大病院を中心に置かれ始めた。だが、まだ一部の施設。その立場もあいまいだ。

 日本移植コーディネーター協議会(事務局・名古屋市)の二〇〇四年の調査では、回答した百十九の移植施設でコーディネーターは計三十一人。しかも、半数以上は看護師との兼任だった。

 「看護師は通常の業務で忙しい。病棟には多くの患者がいるし、移植患者と深くかかわれない」。今年四月、やはり看護師から転身し、岡山大病院で二人目の専属コーディネーター(肝移植担当)となった保田裕子さん(33)は話す。

 同協議会副会長の添田英津子さん(40)=慶応大病院=も「兼任だといずれ燃え尽き、やめていく」と改善を訴える。

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 研修や認定制度など移植コーディネーターのあり方を検討する日本移植学会将来計画委員会の委員長を務める松田暉兵庫医療大学長はこう話す。

 「信頼できる移植コーディネーターの存在は、患者やドナーの安心につながる。学会レベルのガイドラインできちんと導入を盛り込むことも必要かもしれない」

 岡崎さんも、現状にもどかしさを感じている。「私たちは、患者の生活や人生にずっと寄り添っていく重い仕事。でも、その必要性がまだ社会に浸透していない」

 バックナンバー
第5部 足踏み
1 闘い ドナー少数 法に一因 (2007/6/12)
2 戸惑い 救命と脳死 どう対応 (2007/6/13)
3 見えない死 「答え」出すのは家族 (2007/6/14)
4 ダブルスタンダード 矛盾生み現場に混乱 (2007/6/15)
5 約束 カードに刻む妻の思い (2007/6/16)
6 グリーフケア ドナー家族に癒やし (2007/6/18)
7 二つの改正案 節目の年 行方見えず (2007/6/19)
8 15歳の壁 難しい脳死判定課題 (2007/6/20)
9 脳死論議再び 国を二分、見えぬ出口 (2007/6/21)
10 枠組み 専門機関の新設必要 (2007/6/22)
11 アジアの苦悩 進まぬ脳死への理解 (2007/6/24)
12 夢 免疫寛容の謎解明へ (2007/6/25)
13 宝物 問われる命のリレー (2007/6/26)

第4部 生体の光と影
1 プレゼント 元気くれた母の肝臓 (2007/5/25)
2 宿命 リスクと向き合う選択 (2007/5/27)
3 2人の肺 葛藤から感謝へ変化 (2007/5/28)
4 リスク ドナー死亡、再入院も (2007/5/30)
5 重圧 家族に暗黙の強制力 (2007/6/1)
6 ドナーの保護 法による規制不可欠 (2007/6/2)
7 ケアの要 患者、ドナーに安心を (2007/6/3)
8 現実 緊急避難 今や“主流” (2007/6/4)

第3部 アメリカからの報告
1 みらいちゃん 日本で打つ手なく渡航 (2007/4/17)
2 ジグソーパズル 多臓器 (2007/4/18)
3 ゴッド・ハンド 40年間 世界をリード (2007/4/21)
4 UNOSの今 臓器不足に対応苦慮 (2007/4/22)
5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ (2007/4/24)
6 “B級臓器” エイズ陽性でも活用 (2007/4/26)
7 ドナー交換 「生体」際限なく拡大 (2007/4/27)
8 ギフト・オブ・ライフ 脳死患者の情報機関 (2007/4/29)
9 報酬制度 臓器売買懸念の声も (2007/4/30)
10 誇り 生き続ける娘の遺志 (2007/5/1)
11 5%ルール 臓器不足に外国人枠 (2007/5/2)
12 ジレンマ 患者は増え続けるが… (2007/5/3)

緊急寄稿 病気腎をめぐって
1 日本移植学会理事 清水信義 提供者保護が不十分 (2007/4/3)
2 泌尿器科医 万波廉介 患者に希望与え得る (2007/4/4)
3 岡山大大学院教授 粟屋剛 問われる「真の倫理」 (2007/4/3)
4 岡山大名誉教授 折田薫三 自ら「第三の道」断つ (2007/4/6)

第2部 命をつなぐ
1 シャント 「いつだめになるか」 (2007/3/10)
2 人工腎臓 70年代 苦難の幕開け (2007/3/11)
3 不安 心通わせるケア必要 (2007/3/13)
4 高齢化 福祉との谷間であえぐ (2007/3/14)
5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ (2007/3/15)
6 贈り物 新たな“命”も授かる (2007/3/16)
7 ローカルネット ドナー求め病院巡り (2007/3/19)
8 実らぬ善意 脳死と混同、誤解も (2007/3/20)
9 ドナー発掘 献腎の実績に地域差 (2007/3/22)
10 選択肢 臓器提供の道伝える (2007/3/25)
11 うそ 新たな命に思い複雑 (2007/3/26)

第1部 病気腎の波紋
1 延長線 困っとる患者のために (2007/2/2)
2 原点 どうせ捨てる臓器なら (2007/2/3)
3 迷い 公表「がん」がネック (2007/2/4)
4 独自ルート 「宝くじ」の確率なら (2007/2/5)
5 ばらずし 海渡る感謝の気持ち (2007/2/6)
6 学会 歴史の中で原則築く (2007/2/8)
7 一人の世界 「怖いことやっている」 (2007/2/9)
8 ドナーの意思 かぎ握る自発的同意 (2007/2/11)
9 出合い頭 公平の原則どう保つ (2007/2/12)
10 臓器売買 「起こるべくして…」 (2007/2/15)
11 うねり 患者の立場から関心を (2007/2/17)
12 パイオニア 情報公開徹底が第一歩 (2007/2/18)

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