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| 全米トップの腎移植実績を誇るウィスコンシン大医療センター。心停止ドナーからの移植にも積極的に取り組む |
第3部 アメリカからの報告 5 心停止ドナー 延命中止し臓器提供
病気腎移植を行った宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)は、一九八〇年代にここで学んだ。
米ウィスコンシン州マジソンのウィスコンシン大医療センター。臓器移植数(年間六百例以上)は全米トップテンに入る。とりわけ腎移植は突出し、全米トップ(三百六十例=二〇〇五年)の位置を占めている。
万波医師の恩師は故ベルツァー教授(九五年没)。摘出臓器を保存する「UW液」を開発し、臓器移植の進展に画期的な成果をもたらしたことで知られる。
今、この施設で行われているのは「NHBD(ノン・ハート・ビーティング・ドネーション)」だ。直訳すれば、心臓が鼓動していない状態での臓器提供。
だが、日本でも古くから行われてきた心停止後の腎臓移植とは決定的に異なる。
ドナーになるのは、人工呼吸器につながれた患者。本人の意思や家族の同意で医師が装置を外し、心停止からわずか二~五分後に摘出手術が始められる。
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「十年前、NHBDは全米でわずか1・2%だった。将来は25%にまで増やすことが目標だ」。医療センターで指揮を執るアンソニー・ダレサンドロ教授が話す。
大半は腎臓だが、状態が良ければ肝臓、膵臓(すいぞう)も使う。
心臓死に代わる新しい死―「脳死」の定義が認められて以来、米国の臓器移植は脳死を中心に進められてきた。
しかし、それでは需要に追いつかない。脳死ではないが、神経系などに深いダメージがあり、回復の見込みがない患者の臓器の活用が九〇年ごろから着目され始めた。
米連邦政府は九七年、「倫理的に容認でき、移植用臓器の需要と供給の差を縮小するために有効な方法」との報告を出し、NHBDの推進を後押しした。
患者の生命維持装置を外す行為―つまり延命中止について、日本は今、議論のただ中にある。
米国で、延命中止が家族の同意を条件に進められる背景には、終末期医療にかかる膨大な医療費のほか、国民皆保険制度がないことが挙げられている。ICU(集中治療室)などの高額な医療費を敬遠する層が多いからだ。
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異論がないわけではない。
やはり、NHBDを手掛けるクリーブランドクリニック(オハイオ州)。移植医のゴールドファブ医師は「九七年に地元警察が『医師は殺人罪に問われる恐れがある』と警告し、一時、NHBDが中止されたことがある」と振り返る。
臓器の鮮度を保つため、心停止から短時間で摘出するやり方への疑念も根強い。二~五分後というのは、心臓の筋肉が麻痺(まひ)でまだ細動している状態。本当にそれで「死んでいる」といえるのかどうか。「死が生の領域に近づいている」との批判だ。
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「それでも、臓器が足りずに全米で毎日十八人の患者が移植を受けられずに亡くなる。年間で六千人。これは社会的な問題だ」。ダレサンドロ教授は危機感をあらわにする。「ドナーの数は頭打ち。NHBDもいずれ行き詰まるだろう」と。
現在、米国の全移植に占めるNHBDの割合は約10%。今年一月、米政府はすべての病院に、NHBDの摘出手順や家族への説明などの基準を定めるよう義務付けた。
臓器獲得に向けた米国の動きは、さらに加速している。 |