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揺れる移植医療
「移植への理解を求める会」が主催した松山市内での講演会。患者の立場を知ってほしいと企画した=1月20日
「移植への理解を求める会」が主催した松山市内での講演会。患者の立場を知ってほしいと企画した=1月20日
第1部 病気腎の波紋 11 うねり 患者の立場から関心を

 冬の宇和海を望む事務所の二階。水産会社を経営する向田陽二さん(49)=愛媛県愛南町=は、メディアによる“騒動”に不快感を隠さない。

 「万波先生や病気腎移植を批判するばかりでなく、医学的に可能かどうかを検証してほしい。救える命を少しでも助ける方向に向かうことが大事やないやろか」

 六年前、慢性腎不全と診断され、万波誠医師(66)の手で移植を受けた。いとこがドナー(臓器提供者)になった。

 アジやサバの巻き網漁で海へ出る。夕方出港して朝帰る毎日。「透析しとったら、漁師を辞めるしかなかった。ほんと、先生は神様以上。お母さんやな。命、授けてくれた思うとる」

 昨年十一月、「移植への理解を求める会」を立ち上げ、代表世話人に選ばれた。感謝の気持ちとともに、ドナーが足りない移植医療の現状をどうにかしたいとの思いだったという。設立総会には愛媛県内外の患者ら約百二十人が集まった。

 「学会は、はなからダメと言わず、聞く耳を持ってほしい。(病気腎でもいいと)わらにもすがりたい患者の声を、もっと聞いてほしい」

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 脳死からの臓器提供に道を開く臓器移植法の施行(一九九七年)から、今年で十年。内閣府が昨年十一月に行った「臓器移植に関する世論調査」では、59・0%が「関心がある」と答えた。前回調査(〇四年)より4・4ポイントの増。一方、提供意思表示カードの所持率は8・0%にとどまり、逆に前回を2・5ポイント下回った。

 法施行後の脳死移植はわずか五十一例。心臓死を含む献腎移植はこの間、約千四百例実施されたが、約一万二千人いる移植希望者の願いにはほど遠い。

 「みんな移植に関心がない」。向田さん自身、健康なときはそうだった。「患者のつらさ、その家族のつらさは、自分がその立場にないと分からんのでしょう」と向田さんは言う。

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 万波医師らの行動を支援するうねりは、広島、高知県などでも起こった。岡山県では移植患者が病気腎移植への理解を求めるブログを開設。昨年十二月には岡山にも支部ができた。

 求める会の会員は現在、八百五十人に膨れ上がっている。東北や九州からも参加した。「移植した者だけの会じゃない」と向田さんは言う。患者のほか、病気に全く関係ない人もいる。

 「金で治すんじゃなく、病人を本当に治してやらんといかんというのが本当の医者なんよ。患者を治すのが医者の仕事なんや」。向田さんは、そんな思いが多くの人を集めたと感じている。

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 松山市で一月二十日に開かれた「病気腎移植を考える講演会」。求める会が主催した。

 「もし今後、病気腎移植が許されるのなら頑張っていきたい」(万波医師)

 「物事は患者から始まる。後輩の医師たちが後に続き、病気腎移植を切り開いてほしい」(香川労災病院の西光雄医師)

 光畑直喜医師(呉共済病院)を含めた「瀬戸内グループ」の三人に、会場の約二百人は大きな拍手を送った。

 求める会がこれまでに集めた署名は約三万人。十九日に、厚生労働省側に直接手渡すという。

 バックナンバー
第5部 足踏み
1 闘い ドナー少数 法に一因 (2007/6/12)
2 戸惑い 救命と脳死 どう対応 (2007/6/13)
3 見えない死 「答え」出すのは家族 (2007/6/14)
4 ダブルスタンダード 矛盾生み現場に混乱 (2007/6/15)
5 約束 カードに刻む妻の思い (2007/6/16)
6 グリーフケア ドナー家族に癒やし (2007/6/18)
7 二つの改正案 節目の年 行方見えず (2007/6/19)
8 15歳の壁 難しい脳死判定課題 (2007/6/20)
9 脳死論議再び 国を二分、見えぬ出口 (2007/6/21)
10 枠組み 専門機関の新設必要 (2007/6/22)
11 アジアの苦悩 進まぬ脳死への理解 (2007/6/24)
12 夢 免疫寛容の謎解明へ (2007/6/25)
13 宝物 問われる命のリレー (2007/6/26)

第4部 生体の光と影
1 プレゼント 元気くれた母の肝臓 (2007/5/25)
2 宿命 リスクと向き合う選択 (2007/5/27)
3 2人の肺 葛藤から感謝へ変化 (2007/5/28)
4 リスク ドナー死亡、再入院も (2007/5/30)
5 重圧 家族に暗黙の強制力 (2007/6/1)
6 ドナーの保護 法による規制不可欠 (2007/6/2)
7 ケアの要 患者、ドナーに安心を (2007/6/3)
8 現実 緊急避難 今や“主流” (2007/6/4)

第3部 アメリカからの報告
1 みらいちゃん 日本で打つ手なく渡航 (2007/4/17)
2 ジグソーパズル 多臓器 (2007/4/18)
3 ゴッド・ハンド 40年間 世界をリード (2007/4/21)
4 UNOSの今 臓器不足に対応苦慮 (2007/4/22)
5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ (2007/4/24)
6 “B級臓器” エイズ陽性でも活用 (2007/4/26)
7 ドナー交換 「生体」際限なく拡大 (2007/4/27)
8 ギフト・オブ・ライフ 脳死患者の情報機関 (2007/4/29)
9 報酬制度 臓器売買懸念の声も (2007/4/30)
10 誇り 生き続ける娘の遺志 (2007/5/1)
11 5%ルール 臓器不足に外国人枠 (2007/5/2)
12 ジレンマ 患者は増え続けるが… (2007/5/3)

緊急寄稿 病気腎をめぐって
1 日本移植学会理事 清水信義 提供者保護が不十分 (2007/4/3)
2 泌尿器科医 万波廉介 患者に希望与え得る (2007/4/4)
3 岡山大大学院教授 粟屋剛 問われる「真の倫理」 (2007/4/3)
4 岡山大名誉教授 折田薫三 自ら「第三の道」断つ (2007/4/6)

第2部 命をつなぐ
1 シャント 「いつだめになるか」 (2007/3/10)
2 人工腎臓 70年代 苦難の幕開け (2007/3/11)
3 不安 心通わせるケア必要 (2007/3/13)
4 高齢化 福祉との谷間であえぐ (2007/3/14)
5 腎疾患戦略 糖尿病の発症減らせ (2007/3/15)
6 贈り物 新たな“命”も授かる (2007/3/16)
7 ローカルネット ドナー求め病院巡り (2007/3/19)
8 実らぬ善意 脳死と混同、誤解も (2007/3/20)
9 ドナー発掘 献腎の実績に地域差 (2007/3/22)
10 選択肢 臓器提供の道伝える (2007/3/25)
11 うそ 新たな命に思い複雑 (2007/3/26)

第1部 病気腎の波紋
1 延長線 困っとる患者のために (2007/2/2)
2 原点 どうせ捨てる臓器なら (2007/2/3)
3 迷い 公表「がん」がネック (2007/2/4)
4 独自ルート 「宝くじ」の確率なら (2007/2/5)
5 ばらずし 海渡る感謝の気持ち (2007/2/6)
6 学会 歴史の中で原則築く (2007/2/8)
7 一人の世界 「怖いことやっている」 (2007/2/9)
8 ドナーの意思 かぎ握る自発的同意 (2007/2/11)
9 出合い頭 公平の原則どう保つ (2007/2/12)
10 臓器売買 「起こるべくして…」 (2007/2/15)
11 うねり 患者の立場から関心を (2007/2/17)
12 パイオニア 情報公開徹底が第一歩 (2007/2/18)

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